PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)

西洋医学的考え方・治療法

PCOSは多嚢胞性卵巣症候群とも呼ばれます。また、症候群=syndrome(S)を抜かしてPCO、あるいは多嚢胞性卵巣とも呼ばれます。混同されることもありますが、厳密にはPCOSは月経異常(無月経、無排卵周期症、稀発月経)、多毛、肥満、不妊、両側卵巣の嚢胞状腫大などの病態を伴い、より重症と考えられています。

多嚢胞性卵巣は形態的変化や臨床症状、内分泌検査から診断をします。まず形態的変化ですが、卵巣の嚢胞状腫大と白膜の肥厚という特徴があります。卵巣内に10ミリ以下の発育を停止した小卵胞(液体が入った嚢胞状態)がたくさん存在することによって、卵巣が腫れることがあります。また、コラーゲン線維の沈着によって白膜(卵巣の皮)が肥厚して硬化してしまいます。超音波検査では、小さな嚢胞が複数連なって見えますが、これが真珠のネックレスのようにみえるので、ネックレスサインと呼ぶこともあります。

次に臨床症状です、月経異常、不妊、多毛、肥満、男性化徴候などがあります。しかし、日本では欧米に比べて、肥満や多毛の頻度が低いことが報告されています。最後に内分泌検査として、以下の特徴が挙げられます。

1.インシュリン抵抗性
2.アンドロゲン(男性ホルモン)高値
3.プロラクチン高値
4.黄体形成ホルモン(LH)高値

つまり、多嚢胞性卵巣症候群は卵巣内に卵胞がたくさん存在するものの、卵巣の表皮が硬く厚くなってしまい排卵が難しいということになります。重度になると、排卵障害の中でも難治性の疾患になります。

治療としては

1.排卵誘発剤(クロミッド、HMG-HCG注射など)
クロミッドの場合、頚管粘液の量が減ったり質が悪くなったりして、精子が子宮に入っていけなくなるという副作用がでる方がいます。また、子宮内膜の増殖も低下してしまうことがあります。
HMG-HCG注射の場合、卵巣が腫れる事がありますので、注意が必要です。

2.副腎皮質ホルモン(プレドニンなど)
副腎性のアンドロゲンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)やデヒドロエピアンドロステロンサルフェイト(DHEAS)が高い場合、副腎から分泌される男性ホルモンが増加して、症状を悪化させることがあり、これを抑えるために副腎皮質ホルモンを少量使用
することで卵胞発育を促進させます。

3.糖代謝改善薬(メトフォルミンなど)
最近、多嚢胞性卵巣に糖尿病の薬が有効であることがわかり、メトフォルミンという薬が広く使われています。排卵誘発剤で、排卵しなかった方も、メトフォルミンを併用する事により排卵する事があります。

4.高プロラクチン血症(パーロデル・テルロン・カバサール)
脳下垂体から分泌されるプロラクチンが高いと、FSH、LHの分泌が抑えられ、排卵が抑制される。その影響を除くため、ドーパミン製剤を服用することで卵胞発育を促します。

5.外科的治療(腹腔鏡下卵巣焼灼術)
腹腔鏡でレーザーや電気メスを使用し、左右の卵巣に、5~10ミリの穴を20ヶ所ほど開ける治療法で、排卵しやすくします。手術効果は、半年~1年とされています。

中医学的PCOSの考え方と治療法

中医学では、多嚢胞性卵巣は卵巣の周りにお血や痰湿がこびり付き、卵巣膜が硬くなった病態と考えます。軽度の場合と重度の場合では対応が異なりますが、軽度の場合は活血薬、化痰薬に補腎薬を配合した周期療法が効果的です。

中度~重度になると排卵障害が顕著になり、ひどい場合は無排卵になります。このようなケースは生理期~低温期に強力に活血化痰しながら、必要に応じて補腎を行います。特に卵胞内に大きな嚢胞性卵胞が多数存在するときは、強力に活血・化痰・利湿を行い、嚢胞性卵胞を消失させ、良い卵胞が育つことができる環境を整える必要があります。活血・化痰・利湿薬としては、折衝飲、桂枝茯苓丸、温胆湯、シベリア霊芝などが効果的です。
多嚢胞性卵巣でも、もともと大きな嚢胞性卵胞がない人、或は大きな嚢胞性卵胞が活血・化痰・利湿薬で消失した人は、良い卵子を育てるために補腎する必要があります。補腎薬は体質や生理周期に合わせて、亀鹿二仙丸、杞菊地黄丸、瀉火補腎丸、参馬補腎丸、参茸補血丸などを使い分けます。

また、多嚢胞性卵巣では10~30%の人が高プロラクチン血症を伴いますので、炒麦芽や芍薬甘草湯を併用すると効果的です。

漢方薬を服用すると淤血や痰湿が改善されて、卵巣が柔らかくなっていきます。軽度の多嚢胞性卵巣は漢方薬で十分効果があります。重度のケースでも、病院の排卵誘発剤やメトホルミンと漢方薬を併用することによって、良い効果を得ることがあります。

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